不退寺
阿保山の 桜の花は 今日もかも 散り乱るらむ 見る人無しに
Futaiji
承和14年(847)、在原業平が自ら刻んだ仏像を安置した場所を寺としたのが不退寺(真言律宗)の始まりと伝わります。六歌仙のひとりでもある業平は、奈良へ再び遷都することを夢見た平城天皇の孫。この地ももともとは平城天皇の邸宅でした。本尊の聖観音立像(重要文化財)は平安時代の作。長年秘仏とされ、色彩がよく残り、リボンのような飾りが特徴です。業平の理想の女性を刻んだという言い伝えもあります。南門、多宝塔も重要文化財。小さな池を囲む庭があり、初夏のキショウブ、秋の紅葉の美しさが知られています。
みどころ国宝・重文
Hign
重要文化財 聖観音菩薩立像 本堂
不退寺を建立した歌人、在原業平の作と伝わるご本尊。像高は約1.9メートル、桂の木で作られています。大きな髷、垂れた髪の房、はっきりとしたうねのある衣など、平安時代の仏像彫刻の特徴が見られ、宝冠の両側にある一対の大きなリボンが特徴です。現在は彩色の多くが剥げ落ちていますが、もともとは白い基礎顔料と鮮やかな色彩の花柄で彩られた美しい姿で、在原業平の理想の女性を表しているともいわれます。2022年に顔料の剥落止めや継ぎ目の変色を修整するための大規模な保存修理が施されました。
重要文化財 五大明王像 本堂
軍荼利明王、降三世明王、不動明王、金剛夜叉明王、大威徳明王からなる五尊の像。檜を何枚も組み合わせて作られ、怒りに満ちた表情は、悪霊を追い払い、煩悩を祓うといわれます。本堂に安置される前は、それぞれお堂に安置されていました。五体のうち、不動明王だけが平らな台座の上に安置され、伝統的な火焔光背が飾られています。他の4体の像は、大正3年(1914)の修理の際に玉石の形をした台座の上に移されたと考えられています。
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五大明王像のうち、不動明王
境内図

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業平観音
平安時代の歌人、在原業平が理想の女性を思い描いて彫ったという逸話から、業平観音と呼び親しまれています。近年は宝冠から垂れた左右の帯にちなんで“リボン観音”という愛称も誕生。2022年に保存修理を終え、白く美しい肌にいっそう磨きがかかりました。

基本情報
不退寺
- 公式WEBサイト
- http://www3.kcn.ne.jp/~futaiji/
- 拝観時間
- 9:00~17:00(受付終了16:50頃)
- 拝観料
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大人500円、高校生300円、中学生300円、小学生200円
※特別公開時は大人600円、中高生400円、小学生300円
※業平忌(5月28日)は大人700円、中高生500円、小学生300円
- 住所
- 奈良県奈良市法蓮町517
- アクセス
- 奈良交通バス「不退寺口」バス停から徒歩約3分
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※当サイトの万葉集の原文、現代語訳は講談社文庫『万葉集全訳註原文付』(著者・中西進)より引用。