法華寺

朝霧の たなびく田居に 鳴く雁を 留め得むかも わが屋戸の萩

光明皇后

Hokkeji

  • 本堂の外観
  • 堂内でお経を唱える僧侶
  • 鮮やかな紫色の花菖蒲

奈良時代、光明皇后が父・藤原不比等の邸宅があった地に寺を建立し、後に総国分尼寺・法華寺(光明宗)となりました。13~16世紀には、皇族や貴族の娘たちが尼僧としてこの寺に入ったといいます。
夫である聖武天皇とともに東大寺を創り、仏教に篤く帰依した光明皇后は慈悲にあふれた人で、当寺の境内に「浴室(からふろ)」を設け、千人の病人の汚れを洗い落としたという伝説も残っています。本尊の十一面観音立像(国宝)も光明皇后が蓮の池から衆生を救う一歩を踏み出している姿を刻んだとも。蓮の花と葉とが光背のようにあしられているのも特徴です。名勝庭園の石は17世紀に仙洞御所庭園から移されたもので、カキツバタの時期などに一般公開されます。

ひもとく万葉集

現代語訳「朝霧がたなびいている田で鳴く雁を、とどめることができるだろうか。わが家の萩は。」

うつりゆく時の流れを留めることなどできるはずはありません。どれほど大きな力を得た存在であっても。藤原家の娘から皇后となった光明皇后にそのことを教えたのは深く帰依した仏の教えだったことでしょう。(万葉集 巻19・4224番)

みどころ国宝・重文

Hignlights

国宝 十一面観音菩薩立像 本堂

法華寺のご本尊。良質な榧(かや)の木目をいかした一木造で、お寺を創建した光明皇后が蓮池を渡られる姿をあらわしたと伝わり、蓮のつぼみや葉を光背に配しています。長年秘仏であったため状態が良く、しなやかな長い腕や生き生きとした髪に気品が感じられます。左手に宝瓶(ほうびょう)を持ち、右足を少し前方に踏み出して親指を上げているのも特徴的です。春・初夏・秋の特別開扉以外の期間は、大仏師・松久朋琳作の分身像にお参りできます。

  • 正面から見た十一面観音菩薩立像。左手に宝瓶を持っている。
  • 良質な榧の木目をいかした一木造。長年秘仏であったため状態が良い。
  • 生き生きとした髪に気品が感じられる。
  • 右足を少し前方に踏み出して親指を上げている。

国宝 維摩居士坐像 本堂

維摩居士(ゆいまこじ)はお釈迦様の弟子になった古代インドの裕福な商人といわれます。奈良時代(710〜794)の後期に造られた約90センチメートルの像で、あごを引き、痩せて骨の浮き立った体を反らすようにして座る姿は写実的で、肖像彫刻の傑作のひとつと称されます。 長い間、乾漆像と目されてきましたが、X線CT撮影調査によって、衣の一部が乾漆造で本体は木造であることが判明。2017年に国宝に指定されました。

  • 正面から見た維摩居士坐像。あごを引き、体を反らすようにして座っている。
  • 衣の一部が乾漆造で本体は木造である。

境内図

法華寺の境内図

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お寺を知るキーワード

Keywords

お守り犬

民衆の救済に積極的に取り組んだ光明皇后が、お守りとして自ら作り始めたと伝わります。以来、連綿と受け継がれ、今でも尼僧が護摩供養後の灰を用い、ひとつひとつ手作りされています。大変な手間がかかるため、事前予約でしか求められない貴重なお守りです。

尼僧が護摩供養後の灰を用い、ひとつひとつ手作りで作られている。

基本情報

法華寺

公式WEBサイト
https://hokkejimonzeki.or.jp/
拝観時間
9:00~16:30(受付終了16:00)
拝観料

大人700円、小・中学生350円

3/1~14、3/20~31、4/8~6/4の特別公開時

大人800円、小・中学生400円

4/1~7、6/5~10、10/25~11/10の特別公開時

※正倉院展の日程にあわせて変更の可能性があります

大人1000円、小・中学生500円

※華楽園のみ拝観の場合は300円。但し、特別公開中は華楽園のみの拝観はできません。

※国史跡 名勝庭園公開(4/1~6/10)500円

※各種割引は公式WEBサイトをご確認ください。

アクセス
奈良交通バス「法華寺」バス停から徒歩約3分
電話
0742-33-2261

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